観覧車大作戦【短編】
黄
ビルから出ると、十二月の冷たい夜風が私たちを吹き付けた。
ビルの前の広場は、ツリーやサンタクロースをかたどったイルミネーションがきれいだった。
「さてと、もう十一時過ぎだし、はやく帰りましょう」
早紀が言った。
私と透は電車が同じなので、一緒に帰ることになった。
健二と早紀は別の鉄道なので、ここでお別れだ。
さよならを告げて、背を向けたときだった。
「千佳さん」
早紀が背後から呼び止めてきた。
振り返ると、健二も一緒にこちらに向き直っている。
「ごめんなさいね」
申し訳なそうに早紀は言った。
「いえ、もうそれは……」
「うん、それと……」
そのとき、私たちの前を通行人が通り抜けた。
「え?」
「ううん。なんでもないわ」
早紀は言おうとしたことばを飲み込んだようだった。
「さようなら、千佳さん」
そうして、健二たちと別れた。