観覧車大作戦【短編】
「どうした? ぼうっとして。
人にぶつかるぞ」
透が気遣ってくれた。
「ううん。大丈夫」
まもなくJRの改札に到着だ。
透にも悪いことをしたな。
もとはといえば、私のくだらない勘違いのせいでこんなことになったのだ。
つらい思いをしていたに違いない。
「ねえ。透」
「ん?」
「透はどうして、観覧車を待っていた時点で、誤解を解こうとしなかったの?
他人のふりまでしてさ」
歩きながら、透は私をチラリと見た。
「お前の新しい男だと思ったからだよ。
一緒にいた彼をさ」
「ふーん。それで私たちの邪魔をしちゃ悪いと思ったわけだ?」
「なんだよ。
人がせっかく気遣ってやったのに。
それより、そっちはどうなんだよ?
お前はどうして、他人のふりなんかしたんだよ?」
自動改札口の前で私は立ち止まった。
透も立ち止まった。