観覧車大作戦【短編】
人ごみをかき分け、駅の構内を抜けた。
歩道橋に上ると、そこも人でいっぱいだった。
右手に見える家電量販店の外壁には、クリスマスツリーをかたどったイルミネーションが光っている。
彼女はもう電車に乗っているかもしれない。
それでも、僕は走る。
大事な人に小細工なんていらない。
ただ、追いかければいい。
走り続ける中、僕の真横で長い黒髪がふわりと舞った。
ハッとして、立ち止まった。
今のは……?
歩道橋の真ん中で、僕はゆっくりと振り返った。
どうして……?
「千佳ちゃん……」
彼女がいた。