観覧車大作戦【短編】
観覧車乗り場――。
私と健二は列の最後尾に並んでいた。
健二はしきりに腕時計をチェックしていて、落ち着かない。
この観覧車の営業終了は夜の十一時だ。
乗れるかどうか不安なのだ。
「大丈夫ですよ、お客様。
ちゃんとお乗りいただけますよ」
その様子を見て察したのか、係員の女が声を掛けてきた。
スタッフ用の赤い帽子を目深にかぶっている。
健二が見ていないのを確認して、私は係員の女に目を向けた。
サンキュ! 美穂。
私はウィンクした。
彼女も、私にウィンクを返した。
実は、係員の女は私の親友なのだ。
大学の同じ学部に入っていて、授業もよく一緒に受けている。
そもそも健二と知り合ったサークルには、この美穂の誘いで入ったのだ。
ちなみに、私を誘っておきながら、美穂は一ヶ月ほどでサークルをやめている。
健二がサークルに入ったのはその後だったから、二人は面識がない。