観覧車大作戦【短編】
「すみません」
背後から女の声が聞こえた。
「観覧車に乗りたいんですけど、まだ大丈夫ですか?」
振り返ると、女が係員の美穂に尋ねている。
歳は、十九歳の私より、四、五歳年上かな?
オフホワイトのロングコートをすらり着こなしている。
肌は透き通るように白く、顔立ちも整っている。
「そうですね……」
美穂は列を見渡して考えているふりをしている。
彼女を乗せると、私たちが最終便じゃなくなる。
当然断ってくれるはずだ。
「申し訳ございません、お客様。
本日、土曜日で大変込み合っておりまして……」
「はあ」
女はあいづちを打つ。
「前の方々とあいのりとなりますが、よろしいでしょうか?」