観覧車大作戦【短編】

「すみません」

背後から女の声が聞こえた。

「観覧車に乗りたいんですけど、まだ大丈夫ですか?」

振り返ると、女が係員の美穂に尋ねている。

歳は、十九歳の私より、四、五歳年上かな?

オフホワイトのロングコートをすらり着こなしている。

肌は透き通るように白く、顔立ちも整っている。


「そうですね……」

美穂は列を見渡して考えているふりをしている。

彼女を乗せると、私たちが最終便じゃなくなる。

当然断ってくれるはずだ。


「申し訳ございません、お客様。
本日、土曜日で大変込み合っておりまして……」

「はあ」

女はあいづちを打つ。


「前の方々とあいのりとなりますが、よろしいでしょうか?」

< 8 / 61 >

この作品をシェア

pagetop