『短編:ついでのメリークリスマス』
傍を通る人たちが、このバカップルって思うくらいに抱きあった後、
私たちは電車に乗って、人和の家へと向かった。
似たような建物が並んだ住宅街の中でも、建売を思わせる平凡な家のドアを人和は開いた。
玄関の脇にある小さな木には、イルミネーションがついていて、カラフルな色がかわるがわる点滅している。
「ただいま!」
「おかえり~!」
人和の掛け声に間髪いれず、家の奥から中肉中背の中年の女性が姿を見せた。
「いらっしゃい。どうぞあがってね」
「はい。失礼します」
人和に良く似た人のよさそうな顔を見れば、彼の母親だと容易に想像ができる。
少しだけ緊張して家にあがると、机の上には豪華な料理が並んでいた。
「ちょっと人和!ひょっとして、家族でクリスマスのお祝いだったんじゃないの?
私、帰るよ」
おいしそうな手作り料理が大皿に盛り付けられているその風景は、
どう見ても今日の日を家族で過ごすための準備に見える。