『短編:ついでのメリークリスマス』

「大丈夫だよ。今日は、お袋と俺と妹の3人だけだから。

おやじの帰りは遅いし、聖香を入れて4人分の夕飯作ってもらったから」


でも、と私が反論する前にかわいらしい声が聞こえた。


「わ~、この人がお兄ちゃんの彼女?」


台所からエプロンをした女の子が食器を持って現れる。5、6年生だろうか。

人和の細い目とは対照的なくるくるとよく動く瞳が印象的だ。


「こら!和美(かずみ)、ちゃんと挨拶しろ」


「は~い、初めまして、妹の和美です。いつも出来損ないの兄がお世話になってます!」


ぺろりと舌を出しておどけた様子を見せる和美ちゃんに思わず笑みがこぼれる。

こら、と言いながら妹の頭を小突く人和の声には愛情がこもっていて、

多分仲のいい兄弟なんだろうなぁ、と思った。


すでに大方の準備が終わっていたため、私が何の手伝いもすることなく食事が始まる。

人和の家の家族団らんに混ぜてもらうのは、とても楽しくて、自然に笑顔になった。


楽しい時間というのは本当に過ぎるのが早い。

あっという間に大量に並んでいたお皿の中身が空っぽになっていく。


食事が終わる頃、私に何も言わずに人和がすっと席を離れた。



・・トイレかな?



特に気にも留めなかった。

だってサプライズは、さっきの指輪で終わりだと思ってたから。




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