『短編:ついでのメリークリスマス』
人和は私の背中をぽんと叩いた。
そんなこと言ったって無理だよ。
だって、何も見えないもん。
蝋燭の炎がにじんだみたいに広がって、何がなんだかわからないよ。
「ほら聖香ちゃん!ふ~ってやって!」
とお母さんが言えば、
「聖香ちゃん、がんばれ!」
と和美ちゃんも応援する。
3歳の子どもがやるみたいに、私は皆に声援をかけられ、必死で蝋燭に息を吹きかけた。
ちゃんと16本立っているのかわからないけど。
ううん、人和のことだから、律儀に16本立っているに違いない。
一度では消えずに、私は二度三度と蝋燭に風を送り続けた。