『短編:ついでのメリークリスマス』
カチャカチャと音を立てながら、和美ちゃんがゆっくりと紅茶のカップを運んできた。
人和のお母さんは手馴れた様子でケーキを切り分けると、
倒すことなく上手にお皿に取り分けてくれる。
私の名前が入ったチョコプレートは、当然のように私のお皿に鎮座していて。
「よし、食べよっか」
人和の合図で全員がフォークを持ったとき、不意に和美ちゃんがぼそりとつぶやいた。
「そういえば、今日クリスマスだよね。クリスマスのお祝いはしないの?」
一瞬、全員が黙り込んだ。
そうだよね。よく考えたら今日はクリスマスなのに、私が主役になっちゃって、
和美ちゃんだってつまらないに違いない。
すると人和が椅子から立ち上がり、よし!じゃあ、それも祝っちまおう、と言って、甲高い大きな声を出した。