『短編:ついでのメリークリスマス』

家まで送ると言う人和を拒否して一人で家まで帰ってくると、すでに母はパートから戻っていた。


「ただいま」


「あ、聖香、おかえり。すぐごはんにするからね」


お互い姿を見せず、声だけでやり取りを済ませる。

台所から漂うこの匂い。多分今日はカレーだ。


また手抜きか、と思いながら階段を上って部屋で着替えた。

高校に入学してすでに8ヶ月。セーラー服は次第に薄汚れて初々しい感じはまるでない。

それをハンガーにかけていると、机の上に置かれた卓上カレンダーが視界に入った。

クリスマスでまだ3週間もあるって言うのに、何がそんなに楽しいんだか。


ベッドに寝転んで10分もしないうちに、ごはんだと私を呼ぶ声がした。


「は~い!今いく」


だるい体を引きずるようにして台所に下りると、すでに妹が席についてスプーンをにぎっている。

やっぱりカレーだ。


「いただきま~す」


いつもと変わらぬ食事風景。

のはずなのに。


「あ、そうだママ。今年のクリスマス、愛ちゃん家に泊まりに行っていい?」


妹がクリスマスの話題を振った。


あ~あ。私のいないところで話してくれりゃいいのにさ。







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