お父さんのいる空

もうどれくらいになるだろうか。少年は幼稚園が終わるとすぐに神社に向かう。そして、鞄を賽銭箱の横に置くと、すぐに練習を始めた。
「えいっ、えいっ。」
何度も、何度も飛び跳ねた。
「えいっ、えいっ。」
時折、木の根に足を引っかけ転んだりした。それでも続けた。
何度も、何度も・・・。それは空に飛んで父親に会いたい、その一心からだった。
「今日も飛べなかった・・・。」
いつか飛べる、そう信じてここまで来たが、その気持ちも折れそうになっていた。
「お父さん、会いたいよぅ。」
涙が溢れてきた。止まらない。まるで、自分が水槽の中にいるようだ。きっと、水族館の魚たちはこんな景色を見ているに違いない。
「お願いをしてごらん。」
声がした。
「誰？」
「お願いをしてごらん。」
「え、何？」
「空を飛びたいんだろ？だから、それをお願いしてごらん。」
ドキドキしてきた。
「うん、お願いするよ。僕、空を飛びたい！」
空に向かって叫んだ。