蝉の恋

「もしもし?」

携帯電話からは落ち込んでいる時に、私を一番慰めてくれる声が聞こえてくる。

最悪の気分の時に誰かと繋がることができる。

このことは私を大きく安心させてくれるのだけど…。

残念ながら、向こうに聞こえているのは私の嗚咽だけだろう。

今日、セフレの彼から「他にもセフレができた」と言われた。

そのことが酷く悲しかった。

私が泣いている間、電話の向こうからは何も声はかけてこない。

黙って私が泣いているのを聞いてくれている。

だから私は自分自身で立ち直れるまで泣き続けられる。

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