蝉の恋
「悪かったな」
胸の審査が終わった後、着替えているアタシに、反対側の壁を見つめていたアイツは謝ってきた。
ちなみに審査は合格したらしい。
アンダーバストとか、いろいろ問題はあるけど、どうにかするそうだ。
「なにが?」
「さっきの電話」
電話?
「ありゃ嘘だ」
…………はあぁぁ?
本気ではめられた。
ていっ。
鉄アレイが、あの阿呆の背中にあたり、ドゴッといい音がした。
阿呆は悶絶してるみたいだけど…知ったこっちゃないわね。
ふぅ。
助かった。
これでアイツがセフレと電話してた現場にいた、という呪縛から抜け出せる。
「ありがと」
ボソッと言う。
アイツが本当のこと言ってるのか、嘘をついてるのか、嘘なら何が嘘なのか、全部が分からない。