蝉の恋


「悪かったな」

胸の審査が終わった後、着替えているアタシに、反対側の壁を見つめていたアイツは謝ってきた。

ちなみに審査は合格したらしい。

アンダーバストとか、いろいろ問題はあるけど、どうにかするそうだ。

「なにが?」

「さっきの電話」

電話?

「ありゃ嘘だ」

…………はあぁぁ?


本気ではめられた。

ていっ。

鉄アレイが、あの阿呆の背中にあたり、ドゴッといい音がした。


阿呆は悶絶してるみたいだけど…知ったこっちゃないわね。



ふぅ。

助かった。


これでアイツがセフレと電話してた現場にいた、という呪縛から抜け出せる。

「ありがと」

ボソッと言う。

アイツが本当のこと言ってるのか、嘘をついてるのか、嘘なら何が嘘なのか、全部が分からない。

< 55 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop