こいのうた
私…何でこんな人に目つけられちゃったんだろ。
「なぁ?夜深」
「はい」
「夜深って昔からここに住んでんの?」
何を突然、そんなことを聞くんだろう。
「ううん。昔はもう少し田舎に住んでたの。それで、物心ついたとき……」
「……?」
ついたとき…
「夜深?」
「……物心ついたときくらいに、引っ越してきたの。」
言わない。
私は弱くないから。
「そっか…。俺ももう少し田舎に住んでたんだ。」
「じゃあ何で今更引っ越してきたの?高校だってそこの高校に行けば良かったじゃない。」
「それは……内緒だな。」
「…何それ。」
あははと笑う唯人君。
意味深な言葉を言う彼だから、私はふいっとそっぽを向いた。
「夜深~!怒んなって!」
「怒ってない!!」
「怒ってるよそれ。」
「もう!怒ってないよ!!じゃあね!もう家そのマンションだから!!」
「え!?そのマンション!?!?偶然っ!!俺もだよ!!」
はい?