こいのうた
「……み…」
誰かが呼んでる…
「…夜深……夜深…」
「ん……」
私はゆっくりと瞼を開けた。
「あっつ…」
季節が夏に近付いているせいか、いつの間にか眠ってしまっていた私は、汗をかいていた。
「おはよう。あったかくて眠くなるのは分かるけど、こんな場所で寝るのは良くないよ。夜深…」
そんな声が突然、隣のベランダから聞こえた。
顔をあげると、私を起こした彼がいつもの笑顔を私に向けていた。
「……っ…」
寝起きなせいか、何なのか…
その笑顔を見た途端に涙が一気に目に溜まった。
「おいで」
そんな私を見た彼は、少し困った顔をして私に手招きをした。
「ふぇ~…」
私は、子供が泣きながらお母さんの元に駆け寄るように、唯人君に駆け寄った。