こいのうた
「学校休んだね?何かした?」
唯人君は優しく私にそう尋ねる。
「っ…」
私はとうとう、頬を伝ってしまった涙を服の袖で拭いながら、ふるふると首を横に振った。
「っ…ごめ…なさ…」
ただ、唯人君に謝るだけ。
「いいよ。何かわかんないけどね」
私がごめんなさいを繰り返すと、唯人君はクスクスと笑って私の頭を撫でた。
「…夜深。目、閉じて?」
「…め……?」
「うん。目」
急にそう言い出した唯人君に、私は反抗することもなく、ゆっくりと瞼を閉じた。
すると、フワッという感覚が起きて、驚いて瞼を開くと……
目の前には、ベランダの手すりとかではなくて……
「…?」
「夜深がかわいいから」
そう言って微笑む唯人君…
「やっぱり軽いな~!夜深は!羽でも生えてんの?」
「?」
状況を読み込めない私に、唯人君はまたクスクスと笑って頭を撫でた。