こいのうた
私はキョロキョロと周りを見渡して、ようやく理解した。
唯人君は、私の部屋のベランダから唯人君の部屋のベランダに、私を抱っこして移したというわけだ。
「…よ…よく持てたね?」
「ん?夜深は軽いから持てるよ」
「…ありがとう」
軽いから。なんて言われて、嬉しいけど…
どう返事をしたらいいのかわからなかったから、とりあえず、ありがとう。
「…それにしても。夜深、すごい汗だ。」
唯人君は心配そうな顔で私の顔を覗き込んだ。
「暑い中寝ちゃったからかな…汗がすごいの…」
私は襟元をパタパタと扇いだ。
「…シャワー、浴びておいでよ。俺の部屋のでもいいけど…。あ…でも女物のシャンプーとかないや…」
「…いや…自分の部屋のにします…」
「そう?ちょっと残念」
私は顔を赤らめながら、唇を噛み締めた。
「じゃあ…シャワー浴びたらまたおいで?」
唯人君は照れる私をからかうように、そう耳元で囁いた。
「もう!」
私は恥ずかしくて、思わず唯人君の肩にパンチを入れた。