こいのうた
やっぱり唯人君の部屋は何度来ても慣れない。
玄関に入ると緊張して固まってしまう。
「おいで」
玄関で突っ立っている私に、唯人君は手招きをして微笑んだ。
私は靴を脱いで、小走りで唯人君に駆け寄った。
「夜深…かわいい…好きだよ」
「……恥ずかしいよ…」
「本当だよ。だから昔から、雅人に負けたくなかった。夜深が好きで好きで仕方なかったから…」
「昔から?」
「うん…昔から…」
唯人君はそう言うと瞼を閉じた。
「夜深…話すよ。きっと夜深も色々思い出すことがあると思う」
「…うん…そうだといいな…」
私は唯人君の肩に、ゆっくりと頭を預けて
唯人君と同じように瞼を閉じた。