こいのうた
唯人君がそんな風に生きてきたなんて知らなかった。
養子だなんて……
「もちろん、養子として俺を育ててくれた両親は俺をすごく可愛がってくれたよ。甘やかすんじゃなくて、叱るときはちゃんと叱ってくれたし。だから、俺は苗字が違うとか気にしなかった」
「……そう…」
「それからしばらくして、雅人と母親はアメリカに行ったんだ。10歳のときだったな。雅人の勉強のために…。それで…その後すぐに事故で両親が亡くなった…」
唯人君はフッと笑った。
「俺は一人になった…。一人ぼっち…。迎えに来てくれると思ったんだ。本当の母親と雅人のところには父さんの保険金が入って、それで生活は苦しくなんかなくなったから。だから、俺はアメリカに行くって話を聞いたとき、元の苗字に戻れると思ったよ。だけど…そんなの期待した俺が馬鹿だった。」
「唯人君……」
唯人君は顔に手を当てて、目を隠した。
その仕草がとても悲しそうで、私は唯人君を強く抱きしめた。