こいのうた
「…もういいよ…無理して話さなくていいよ…」
「……優しいな…でも、大丈夫だよ。ありがとう。大丈夫だから…」
「本当に?」
「うん。辛くなったらやめるよ。だから、全部言わせて?」
唯人君は抱き着く私によしよしってして優しくそう言った。
「……うん…」
私は大人しく頷くと、唯人君の横に座り直して元のように頭を唯人君の肩に置いた。
「雅人達がアメリカに行った後だよ。俺と雅人は仲が悪くなった。俺が一方的に連絡も断ったし…」
「じゃあ、生活はどうしてたの?」
「養子先の家が金持ちだったのが幸いだったな。もちろん子供がいなかったから、全部財産は俺のものになった。ただ、まだそんなの管理できる歳じゃなかったから、おじさんが色々面倒みてくれたけどね」
「…じゃあ、ここに来たのはいつ?」
「…ここに来たのは本当にあの日だよ。夜深に会った、あの日…」
「…本当…?」
「本当だよ」
あの日が…運命の日のようだと
思ったよ…