こいのうた
いつもみたいに夜に逃げてた日。
唯人君が闇から私を見つけてくれた。
「星が綺麗で、散歩に出てたんだ。そしたら、前に寂しそうに歩く子が見えて…その子の背中が夜深の背中と重なったんだ。ずっと忘れられなかったから…それで気づいたら、その子の腕を掴んでた」
あの時…
掴まれた腕が熱を帯びて、少し胸が高鳴った。
「気づいたら腕を掴んでて、余計なお節介してて……うざいってわかってたけど顔が見たくて…やっと顔をあげたその子が夜深だったとき…一瞬時間が止まったよ」
「…気づいてたの?」
「うん。一目でわかった。」
「……!…だからっ…」
だから唯人君が転校してきた初日、屋上に行った私を追いかけて来て
『一目惚れ』
なんて言ったんだ。
「転校先に夜深がいたのも予想外だったよ。あの時名前を知ってたのは名簿を見たからなんかじゃないよ。名簿なんて貰ってもなかった」
「知って…たから?」
「夜深をずっと好きだったんだ」
唯人君は肩に寄り掛かる私を自分の方へクルリと向けさせ、真っすぐな瞳で私を見つめた。