こいのうた
救世主
どこへ行こう……
私はとりあえず遠くに行きたくて
タクシーに乗り込んだ。
「どこまでですか?」
タクシーの運転手さんは私の顔を見て少し怪しんだ様子だけど、いたって普通にそう聞いてきた。
「……どこか…どこか遠くの…遊園地がいいな…」
「県内でいいですか?」
「遠くなら。」
「でも、この時間ならすぐに閉園しちゃいますよ。」
「いいんです。ちょっと、頭冷やしたいだけなんで。」
「そうですか。じゃあ、動きますね。」
運転手さんは不思議そうな顔でそう答え、タクシーを発車させた。
ーー『お母さん達……』
「っ……」
窓の外の景色を見ながら、留守電のメッセージを思い出す。
私……
これから、どう生きればいい?
もう……何もかもがどうでもよくなっちゃった…
「はい。つきましたよ。」
「…いくらですか」
「5000円でいいよ。君、高校生だろ?」
「…すみません。」
私は5000円を運転手さんに手渡してタクシーから足早に降りた。