こいのうた


カツカツと彼が黒板にチョークを走らせる音が響く。



最後にカツンとチョークを置く音がしても私は窓の外に視線を置いたままだった。




「佐野唯人です!みんなと仲良くしたいんで!よろしくお願いします!!」


そんな自己紹介にひそひそと声を潜めて話している女子。



本当に女子って変。



喜びすぎでしょ。




「えー…じゃあ、席は…空いてないから…おい!学級委員、そこの相澤の横に机とイス持ってきてくれ!」




……は?



私は思わず、眉間にシワを寄せた。



今私の名前が聞こえた気がする。



「おい、相澤。いいよなお前の横、空いてるし。」



担任は私の元へとわざわざやって来てそう言った。



そんなこと言われたら…


「……はい…」



って言うしかないじゃん……




「よし。じゃあ佐野!相澤はこいつだからなあ!!仲良くやれよ!!」



私は近付いて来た彼をムスッとした顔で見つめた。




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