たった ひとつの 恋
みんなで過ごす時間はあっという間にすぎ、夕食は近くのレストランで済ませた。あまり遅くなるといけないからと、まだ遊びたがる広海を春くんが説得してくれて、解散することになった。
「つまらねえ」と、広海は1人でブツブツ文句を言っていたが、渋々駅まで送ってくれた。


駅に近くなった時に、広海は私に「俺さ、」と話しかけた。
「今日は誕生日なんだ」
ちょっと恥ずかしそうに言った。
「誰も祝ってくれる奴いないから、祝って」
「えっ。誕生日?」
私は唐突過ぎてびっくりして聞き返した。
「そう。20歳の」
「おめでとう!もっと早く言ってくれたらみんなでお祝いできたのに…」
「みんなはいいよ。な、祝って」
“祝って”と言われても、どうやってお祝いしたらいいのか私は困ってしまった。もうすぐ駅に着いてしまう。

結局、何も思いつかないままで駅に着いてしまった。


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