たった ひとつの 恋

けれど、この日ほど、行かなきゃ良かったと後悔した日はなかった。
春くんが無邪気に言ったことを、私は聞き逃さなかった。
「広さん、彼女っぽい人ができたんだよね~」
“彼女っぽい”ってなに?彼女なの?彼女じゃないの?
「しかも4歳も年上!」
年下狙ってたんじゃなかったの?
「家族ぐるみの付き合いなんだって」
家族って……

言葉にできない突っ込みを入れながらじっと聞いてると、誰かが隣に座った。広海だった。
私は、かぁっと頬が赤くなるのがわかった。

「春、余計なこと言ってるなよ」
と広海は春くんの肩に腕を回した。
「よぉ。久しぶりだな」
私のほうを見てまぶしそうに目を細めて笑った。見たかった笑顔が目の前にあった。
「広さん、莉子ちゃんが隣県の美短大受けるんだって!」
「おまえの家から通えるの」
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