たった ひとつの 恋

   …* 2 *…



初めて足を踏み入れた大学は、活気に溢れていて楽しそうで、仮装している人やロビーでギターをかき鳴らしている人、中庭で大きなキャンパスに絵を描いている人…全てが自由だった。

「はじめまして、来てくれてありがとう」
メガネをかけた男の人が優しそうな笑顔で私達を出迎えてくれた。
彼は『春(ハル)くん』、礼のバイト先の人で芸大の2回生の20歳。
春くんの隣にいるのは『覚(サトル)くん』で、真っ赤な髪が綺麗なとても大人しい印象の人で社会人の20歳。そして『大輔(ダイスケ)先輩』は春くんの高校の先輩で、2人よりも1歳年上の21歳で春くんと同じ大学の3回生。
礼は私達を紹介してくれた。リーダーシップのある礼は、クラス委員を1年の時からずっとしているしっかり者。亜季は静かだけど、みんなのことをよく見ていて気配りができるお姉さんのような子。実久はスポーツが得意で明るくて、私は彼女には何でも話せた。


「春くん、広海(ヒロミ)さんは?」
礼は春くんに聞いた。
「まだ来てないんだ。どこかでケンカしてなきゃいいんだけど…」
そういえば、礼から1人だけケンカっ早い人がいると聞いていた。それが“広海さん”なのかな。




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