たった ひとつの 恋

    …* 3 *…



構内をウロウロしたあとで、私達は中庭で座り込んで話していた。10月のわりに、冷え込んでいた。

覚くんが寒いだろうからと、暖かい缶コーヒーや紅茶をみんなに買ってきてくれた。
「莉子ちゃんはどれにする?」
「私、ココア」
「あ、俺もココア好き。美味いよね」
覚くんは顔をくしゃっとさせながら笑った。顔に似合わず甘党なんだよね~と話してくれた。
「覚が女の子と話すなんて珍しいね」
大輔先輩は覚くんをからかうように言った。
「礼ちゃんとも話します」
覚くんは少し顔を赤らめていた。実はとても照れ屋さんで、礼に話す時も敬語だったりするらしい。

みんながふざけあってる横で、広海は1人違う方を向いて座っていた。
と、私は寒さをしのぐために抱き締めていたココアを転がしてしまった。転がったココアは、座っていた広海にあたって止まった。チラリとココアを見た広海に私は
「ごめんね」
と声をかけてココアを拾う。
そしてすぐにまた転がしてしまった。ココアは広海にあたって止まった。
「よく落とすなあ。覚が悲しむぞ」
広海がサングラスを外して、ココアを拾ってくれた。


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