†神様の恋人†
彼女の案内で、わたしとカミーユは無事、裏口から娼館を出ることができた。

カミーユに手を引っ張られながら、真夜中の夜道を歩く。

不思議な気分だ。

ここに来る前は、カミーユと手をつなぐなんてありえなかったけど、今は自然にこうしている。

「結局、エリザさんを助けられなかったね…」

ジル・ド・レイに連れ去られてしまった彼女を想うと胸が痛くなる。

「…娼婦をやめてくれたら、今はそれで十分だよ。彼女はもうオレのものじゃない。これ以上はオレの出番じゃないさ」

残念そうにも嬉しそうにも思えない口調だけど、カミーユははっきりとそう言った。

「ジル・ド・レイ……すごく、怖い人だと思った…わたし、彼に会ったことがあるような気がするの…なぜだろう?」

「…ジルに会ったのか!?」

カミーユの顔が突然険しくなる。

この前もそうだったことを思い出し当惑した。

「…会ったけど、ちょっとだけだよ?すぐに気分が悪くなって倒れちゃったし。でも、すごく怖かった…」

カミーユはじっとわたしの顔を見つめたあと、一つ大きなため息をついた。

「…そうか」

「……カミーユ?何かあるの?」

ジル・ド・レイのことを話すカミーユの顔は普通じゃない。

そりゃ、莫大な財産を争わされている2人の間には普通じゃない何かがあるだろうけど。

ましてや、ジル・ド・レイはカミーユの恋人と結婚したんだもの。

でも、気になってしかたなかった。

「なんでもないよ。もう会わなければそれでいい」

カミーユはそれだけ答えると、再び歩き出した。




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