†神様の恋人†
宿屋の外まで追いかけていくと、ジャンヌはしゃがみこんで今にも嘔吐しそうなほど、苦しげだった。

駆け寄り、ジャンヌの肩を支える。

「ジャンヌ!?どうしたの?気分が悪いの!?」

「…だ…いじょうぶ…なんでも…ない」

いつもとは違うか細い声で言うジャンヌ。

「大丈夫じゃないよ!すごく具合悪そうだもん。つらいならつらいって言って、ジャンヌ!」

その瞬間、ジャンヌはわたしの腕を力強く握り締めると、わたしの胸に飛び込んできた。

「…ジャ…ジャンヌ!?」

「ごめん、ミシェル。…もう少しこのままでいて」

……ジャンヌ…震えてる……。

いったいどうしたの?

苦しそうに息を吐きながら言うジャンヌをわたしは抱きしめ返す。

しばらくして息も整ったジャンヌは、わたしを抱きしめたまま言った。

「…わたし、男の人が…怖いんだ。触れられると体が勝手に震えてしまう……」

……男の人が……怖い……!?

「ジャンヌ…いつから?」

まだ少し震えているジャンヌを包み込むように抱きしめる。

「…神様に“処女を護るように”と言われた時から徐々に……カトリーヌが殺された時に見た光景も……頭から離れないんだ…!」

処女を奪われ、無残に殺された姉のカトリーヌ。

ジャンヌの体は“処女を護れ”という教えを忠実に護ろうとするあまり、男性との接触を徐々に拒否するようになり、そして姉がされたひどい仕打ちが決定的となり、男性を拒絶しているに違いない、と思った。

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