†神様の恋人†
その祈りは5日目に差し掛かっていた。

飲まず食わずで祈り続けるジャンヌのいる礼拝堂の外で、わたしは手を合わせた。

「…神様、どうか、アリアとジャンヌをお護りください」

ジャンヌが断食をしながら祈り続けているという噂は、ヴォークルール中に広まっていた。

4日目になった時には、礼拝堂の外に街の人々が集まり、皆、ジャンヌに向かって手を合わせた。

「なんて子だ。自分の家族でもないのに…」

「わたしは最近、あの子に神のご意志が降りてきているんじゃないかと感じるんだよ」

「あの子は、神の子だよ」

口々にジャンヌの噂をする人々。

わたしはそれを見ながら、さらに強く神に祈った。

……人々が、ジャンヌの尊い心を感じ始めた。

………ジャンヌ――――!!!



アリアが病の床に伏してから6日目のことだった。

「…アリアの黒死病が治った……!!奇跡だよ……!!」

アリアは奇跡的に生還した。

「……ジャンヌ―――――!!!アリアが、アリアが治ったの!!」

ジャンヌのいる礼拝堂の中を全速力で走る。

ジャンヌは、うつ伏せに倒れながらもキリストの像を見上げ、手を組んでいた。

抱き起したジャンヌは、ゆっくりと顔を綻ばせていった。

「…ジャンヌ、ジャンヌの祈りが通じたんだよ」

「……よかった」



そのまま意識を失ったジャンヌをわたしは神の前で力いっぱい抱きしめた。



「……ジャンヌ!!」



……神様、今だけは、あなたの前でジャンヌを抱きしめてもいいでしょう―――?







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