†神様の恋人†
「もう一人の警護の方は?」

わたしは6名と言われていた警護の者が1名足りないことに気づき、隊長に訊いた。

「もう1名はヴォークルールの街の出口に来ているはずだ。ちょっと用があって遅れたのでね」

「そうですか」

銀色の甲冑を着たいかにも頑強そうな警護の男たちが馬にまたがり、ジャンヌの後ろについた。

「出発しましょう」

警護の者が出発をうながす。

ジャンヌは馬の手綱を引くと、フランス門の外へと馬を歩ませた。

その瞬間、人々の歓声が沸き起こる。

片手をあげ、歓声に応えるジャンヌ。

「ジャンヌ、かっこいい!男装だ!」

アリアの甲高い声がジャンヌにも届いた。

「アリア、元気で!」

肩まであった髪を首の根元まで切り、黒のローブに黒のタイツ風のズボンを履いたジャンヌは、ぱっと見では男性と見まがうほどの雄々しさだった。

「ミシェルも男装だ~!」

アリアが馬上のわたしを見上げて言った。

隣にいたクロエおばさんも目を点にして、わたしたちを交互に見る。

「まぁまぁ、二人も息子が増えちゃったわ」

わたしは髪の毛を首の後ろで一つに結び、青のローブに黒のタイツ風のズボンを履いていた。

わたしが隊長にお願いしたかったのは、男装したいということだった。

男装なら必要以上に男性から女として見られることもなく、スカートを履いているよりは危険が減るからだ。

だけど、ジャンヌの男装の素晴らしさに人々は一様に目を細めていた。

雄々しく、神々しさまでまとったジャンヌは、まさに人々にとって“神の子”だった。



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