†神様の恋人†
ジャンヌの姿を見て涙する者までいる中をわたしたちは歓声を浴びながら通り抜けた。

「メルシー!!ヴォークルール!!オ・ルヴォワール(さよなら)!!」

ジャンヌの叫びは天高く響き渡った。




警護の者1名と伝令使コレ・ドゥ・ヴィエンヌを先頭に、わたしとジャンヌが真ん中を走り、後ろにはまた警護の者が3名ついた。

ヴィエンヌ伝令使は直接王太子様から遣わされてヴォークルールまで来てくれたという。

彼はその仕事柄、戦地の情勢や地形に詳しく、危険な場所を避けてわたしたちをここから南西に位置するシノン城まで連れて行ってくれるという。

「旅は10日ほどになります。敵に遭遇する危険を避けるため、行動は夜間のみ。宿泊も人目を避けるため宿屋ではなく、野宿か修道院になるでしょう」

ヴィエンヌ伝令使は淡々と馬上で説明した。

聞いただけで女性には過酷な旅だとあらためて思う。

初めて乗った馬も乗り心地が悪く、うまく歩かせるだけで筋肉が疲労してくる。

そして、ヴォークルールの出口に差し掛かった時だった。

右前方から、晴れた空に金色の髪をなびかせた者が馬に乗ってやってくる。

いななく馬の首を優しく撫でながら近づいてきたその男は、皮肉気に笑うと言った。

「ジャンヌ・ダルク。そして…ラファエルだったかな?王太子様への謁見の旅。ご同行いたしましょう」

ほぼ1ケ月半ぶりだった。

なぜ………彼がここにいるの――――――!?



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