†神様の恋人†
1日目の夜がやってきた。

辺りはもうすっかり真っ暗で、わたしたちは睡眠も十分だった。

……のはずだけど、カミーユはまだ少し寝足りない様子であくびをしている。

かくいうわたしも、カミーユが近くにいると思うとなかなか寝付けず、皆の寝息をずっと聞いていた。

でも、カミーユの寝息らしきものは何も聞こえなかったし、寝ている様子もない気がしたのは、気のせいだろうか……?

森の木につないでいる馬を自由にし、警護隊や伝令使が馬に乗る準備をする。

わたしとジャンヌが彼らのもとに行こうと歩き始めたその時。

後ろでのっそりと起き上ったカミーユが、小声でわたしを呼んだ。

「ミシェル」

呼ばれて振り返ったわたしに、ジャンヌが笑顔で「行っといで」と背中を押し、自分は馬のもとへと走って行った。

ちゃんとカミーユと向かい合うのは再会してから初めてだった。

緊張で声が出ない。

カミーユは冷たい表情で顔を背けると言った。

「まさか君たちの探し人が、王太子だったとはね」

……そうか、カミーユが無口だったのは、わたしがヴォークルールにいる理由で嘘をついていたことを怒っているんだと納得した。

「…あの…王太子様に会うためなんて、言いづらくて…カミーユ、怒ってる?」

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