†神様の恋人†
カミーユは真顔でわたしを見つめ返すと、苦笑した。

「怒ってないよ。…ただ、君をシノンに行かせたくなかっただけだ」

「…どうして?」

シノンとわたしにいったいどういう意味があるのかわからなかった。

「シノン城には王太子だけじゃない。あのジル・ド・レイもいるんだ」

……ジル・ド・レイ――――!?

「彼は王太子の軍の指揮官だからね」

ジル・ド・レイは奥さんのエリザさんを連れ戻してからシノンに行っていたんだと初めて知った。

それに指揮官だなんて………!

「そうなんだ……でもなんで?なんで会わせたくないなんて?」

「それは、今は話せない」

「カミーユ…?」

まただ。

カミーユは何かをわたしに隠している。

「でも、行くとなった以上は君たちを全力で護るしかないと思ってる。ミシェル、ファビオに気をつけろ」

「……え?ファビオって…なんで?」

きょとんとカミーユを見上げた瞬間、カミーユはわたしの耳元に囁いた。

「寝ている君たちを襲おうとした」

「……え…えぇえええ!?」

そんなの全然わからなかった。

……カミーユ、もしかして……彼に足を掛けたのはわたしたちを護ってくれていたの?

そのためにずっと寝なかったんだ……。




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