†神様の恋人†
このドンレミ村は、ムーズ河のほとりにあり、河の支流があちこちに流れている様はのどかそのものだ。

村の外では、何十年も前から激しい戦闘が繰り返されていることが嘘のように感じる。

フランス国王シャルル4世が正当な後継ぎのいないまま亡くなり、従兄弟のフィリップ6世がフランス国王となったこと。

それに対して、自分こそが正当なフランス王位継承者だと不服を示したシャルル4世の甥であるイギリス国王のエドワード3世。

そこからイギリスとフランスの王位継承をめぐる睨みあいが始まった。

それから数十年がたち、頼みのフランスの王太子シャルルは条約を無視してフランス王を名乗ってはいるが、発狂し戦意を喪失、フランス国内を転々としているという噂。

それに見切りをつけたフランス王家のブルゴーニュ公はイギリスと同盟を結び、今、フランスはブルゴーニュと王太子を奉じるアルマニャック派による内戦状態となっているのだ。

着々と勢力を拡大しつつあるイギリス軍。

この村の平和な時も、いつか、終わるのだろうか……?

「どうしたんだ?ミシェル。難しい顔して」

ムーズ河のほとりに着いて、ジャンが歩の進まないわたしを振り返った。

「ちょっとね。この前ジャンヌからこの国の状況について聞いたから」





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