†神様の恋人†
ジャンヌが男の子といてこんなに楽しそうな姿を見たのは、初めてだったかもしれない。

笑うジャンヌは魅力的だった。

ステップを間違って転ぶと大きく口を開けて笑い、フランクが何か冗談を言ったのを聞いて女の子らしく噴き出す。

こうして見ていると、ジャンヌは本当に普通の少女だ。

どこにでもいそうな、でも、その内心に鉄壁の信仰心と、決して揺るがない祖国への愛、人類愛を固く秘めている。



―――――ジャンヌは、神に愛される全てを持っている。




「ね、ミシェルも踊らない!?」

ジャンヌが木の向こうから大声で叫ぶ。

わたしの胸に、少し、不安がよぎった。

こんなに素敵なジャンヌに、神が“恋”をしないなんて、あり得るだろうか――――?

わたしは、ふらりと立ち上がると、ジャンヌたちに背を向けて木立の中へとそっと入っていった。



……ジャンヌ、お願い、恋をして。


神様に愛される前に。

神様が、あなたに恋をする前に―――――――!!!


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