†神様の恋人†
ジャンはスっと立ち上がると、少し怖い顔でわたしに歩み寄り、わたしの手を取った。

「ミシェルはお前だけの妹じゃない。そんな危険なとこに行かせられない。ミシェルはまだ14歳なんだぞ」

こんな怖い顔のジャンを見たのは初めてだった。

ジャンヌは表情を変えずに見ていたけど、すぐにふっと息をつくように笑った。

「…やっぱりね。良かった、ジャンが止めてくれて。ミシェルがどうしても行くって言うからわたしには止められなくて悩んでたとこ。ミシェル、こういうわけだからさ。ヴォークルールにはわたし一人で行くよ」

「…ジャンヌ…!!」

あっけなく引き下がるジャンヌに、わたしは慌てて声を荒げた。

「…ジャン、お願い。わたし、ジャンヌと一緒に行きたいの!!ジャンだって、ジャンヌのこと心配でしょ?ジャンヌのこと一人にできないもの」

うったえるようにじっとジャンを見上げる。

ジャンが何かを言おうとして口を開きかけた時、ジャンヌが言った。

「無駄だよ、ミシェル」

「…え?」

「ジャンが一番心配で、愛しいのは、ミシェルだ」

「…ジャンヌ…?」

ジャンヌが言う意味をすぐに理解できなくて、わたしは困惑ぎみにジャンを見上げた。

ジャンは、少し照れたように目線を下げたけど、すぐに真顔になってわたしをじっと見つめた。

「ジャン!ミシェルに求婚でもなんでもして、しっかりつなぎ止めておきなよ。じゃ、邪魔ものは消えるよ」

「ジャ、ジャンヌ!!」





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