†神様の恋人†
「ジャンヌ…ガッカリしないで。まだチャンスはあるよ」

結局、すごく待たされたけどロベール隊長には会えなかった。

『隊長は取り込んでおられる』との回答だったけど、あの扱われ方を見ると、鼻であしらわれたのは明らかだ。

わたしたちは城内の礼拝堂で祈りを捧げてから、城下町の下宿まで帰ってきた。

「ミシェル、がっかりなんかしてないよ。何度もこういう目にはあってるからね。わたしは大丈夫。それよりミシェルも疲れたでしょう?今夜の手伝いはわたしがミシェルの分も働くからミシェルは休んでるといい」

「ジャンヌ、わたしは大丈夫!ここの手伝い楽しいもの。わたしにも働かせて」

気を遣うジャンヌにわたしは明るく振る舞った。

でも本当にこの宿屋の手伝いは、ずっとドンレミ村にいたわたしにとってとても新鮮で、はじめて人の役に立っているという喜びでいっぱいだった。

クロエおばさんが手際よく盛り付けた食事を夕食を食べに降りてきた客にふるまう。

小さな宿屋のダイニングは食事やお酒を楽しむ数名の男性客でいっぱいになっていた。

「ついでくれないか?お嬢さん」

ふいに若い男性の声に呼びとめられて、お酒の瓶を持ったまま振り返った。

金色の肩まで伸びる長髪に、フランスの空のような青い瞳。

長い足を無造作にテーブルの外へ投げ出し、腕に絡みつく金髪美女が持っているグラスを指差すそのどこからどう見ても美形の男性に、わたしは息を呑んだ。

………まさか………!?

「どうしたの?マドモアゼル。彼女に酒をついでやってくれないか?」



―――――カミーユ………!!!


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