†神様の恋人†
忘れるはずもない人だった。

あれからもうすぐ4年がたつけど、その完璧なまでの容姿にどこか反骨精神を漂わせたような表情も変わらない。

どこかクールで、皮肉気で。

でも、あの時、最後に彼が見せた笑顔は優しかった。

わたしの命を助け、初めて唇の触れあったその人が、そこにいる。

カミーユは少し酔ったような調子で隣の美女の金髪を撫でていた。

カミーユと言いかけて、躊躇した。

彼が11歳だったわたしと今のわたしを重ねあわせることができるだろうか?

きっと、わたしのことなんてとっくに忘れている。

しかも酔っぱらって美女をその腕に抱いているような男の知り合いだなんて思われたら、こっちが失礼しちゃう。

カミーユが気づいていないならそれでもいい、そう思った時、美女が微笑を浮かべて猫のような甘い声を出した。

「ねぇ、カミーユ。この子、おっかない顔して、客を舐めてるんじゃな~い?」

カミーユは持っていたグラスをテーブルへ置く。

そして服の中から金貨を出すと、その酒の入ったグラスの中に落とした。

「どうした?お嬢ちゃん。怖い顔して美人が台無しだ。ほら、チップだ。金が欲しいんだろ?それをやるから酒をついでくれないか?」

どこまでも皮肉気に笑うカミーユ。

……なんてやつ…!!

わたしに全く気付いていないなら、ちょうどいいわ。

こうしてやる!!



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