†神様の恋人†
なぜか、カミーユに付いてきてしまった自分が情けない。

昨夜あんなに泣かされたのに。

でも今日のカミーユは、昨日とは違う。

笑顔が、あの日のままだったから。

だから……昨夜のことは許してやる。

「君はドンレミにいたんだろ?どうしてヴォークルールにいるんだ?」

町の中を散歩しながら、一歩前を歩くカミーユが言った。

「……」

どうしようか迷った。

話すならジャンヌの“神の声”のことや、王太子様に謁見したいという願いも話さなければならない。

とてもじゃないけど、普通の人が理解できる話じゃなかった。

きっと、おかしな奴らだと思われるのがオチだ。

「…ちょっと人を探してて…姉のジャンヌと一緒に来たの」

「へぇ。人探しね。偶然だな。オレもある人を探しててね…」

「…え!?そうなの?」

カミーユは狭い裏通りに入った所で立ち止った。

そしていかにも“女の蜜”を求めて男たちがやってきそうなその館を切なげに見上げた。

「こんな『娼館』にまで潜入してね」

「…潜入って…ここに探してる人がいるの!?」

『娼館』って体を売る娼婦が雇われている店……こんなところにカミーユの探し人が?

「精神を病んだオレの元恋人がね。ここにいるって知ってから何度も通っているんだが、一度も会えてない。オレが来ていることを知って避けているらしい。一度でいいから会って、彼女にこんなことはやめろって言ってやりたいんだが」

そう言ってカミーユは苦笑した。



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