†神様の恋人†
こうして、わたしの無謀な挑戦は始まった。

決行は今夜。

何かあった時のために、カミーユも客として娼館に一緒に入ることになった。

……それはちょっと嫌な気もするけど。

「…な、なに考えてるの、わたし!?」

わたしの一人ごとにカミーユが反応する。

「何言ってんだ?入るぞ」

カミーユに連れられて入ったのは、この町で唯一の男性服の仕立屋だ。

小さなお店に所狭しと貴族やら金持ちやらが着ていそうな服が並ぶ。

「…わぁあ、すごい!」

ドンレミ村には仕立屋なんてなかったから、生まれて初めて見る高貴な服の数々。

「娼館には少しいい服を着て行ったほうが信用されるからな」

そう言ってカミーユは品定めを始める。

かなり高そうな服を次々と見ていくカミーユをわたしは呆然と見つめる。

カミーユってもしかしてすごい金持ちなんだろうか?

確かに身なりもいいし、身のこなしも上品だけど。

「これはこれは、カミーユ・ド・クラン様。本日はどのような品をご所望でしょう?」

店の奥から出てきた口ひげをはやした男性がカミーユに声をかけてきた。

「ボンジュール、オベール。この子に合う紳士服を見たててやってほしいんだが」

「…え…このお嬢さんにですか?」

目を丸くして驚くオベールという男性。

「ああ。美形だから紳士服もなかなか似会うと思うんだが。それからこのことは内密に頼む」

「…承知しました。クラン様」

……カミーユって一体、何者なの……?

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