†神様の恋人†
隣にいるカミーユが少し息をついたのがわかる。

わたしはなんとなく切なくなりながら、男に言った。

「その女で願いたいのだが」

「旦那ももの好きですな。では、エリザは名前と顔を確認してからでないと出てきませんので、お名前をちょうだいできますかな」

名前はカミーユが適当に言ってくれることになっていた。

「彼は、レオ…」

「ラファエル…です」

なぜその名前を言ったのか。

自分でもわからなかった。

ただ、記憶の底に沈んでいるように時折、胸の奥に聴こえてくるその名前。

……なぜラファエルなんて……?

「ラファエル様ですか…では、少々お待ちを」

男が部屋の奥へと消えていくのを見送る。

「…ミシェル…お前…なぜその名を…?」

カミーユがわたしの肩を掴んで小声で言った。

わたしの胸の内を探るように、青い瞳が彷徨う。

「…わ…からない。ただ、なぜかすごく心に残っている名前だったから…。変だよね。ラファエルなんて知り合いいないのに…」

カミーユは考え込むように眉根を寄せた。

「ただの思いつきだよ、カミーユ」

「いや…そうだよな」

カミーユの瞳が、一瞬、切なげに揺らめいたのは、気のせいだった気もしたけど、わたしたちはそのまま口をつぐんだ。



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