†神様の恋人†
カミーユのことはとりあえず心配ない……少なくとも危害を加えられるわけじゃ、ない。

少し胸がじりじりと痛かったけど、エリザのことが心配なわたしは、足音を立てないようにゆっくりと男が消えていったドアへと近づいた。

ドアに耳を当てると、部屋の中から少し太めの声音が聞こえてきた。

……さっきの男性…?

「エリザ、私は君に充分なほどの時間をやった。娼婦になり下がった君を迎え入れようと言っているんだ。祖父が君を連れ戻せとカンカンでね。言っておくが、私よりも祖父のほうが君に失望しているはずだよ」

丁寧で優しい口調から、とてもエリザが言っていたような男だとは思えなかった。

沈黙が流れる。

エリザがどうするのか緊張で胸が痛い。

そして、その緊張の糸をエリザのきっぱりとした声が破った。

「わかりました。戻ります。どんな罰でも受けましょう」

「だめ!!エリザさん!!」

思わずドアの向こうに向かって叫んでしまったあと、両手で口を押さえたけど後のまつりだった。

中から開け放たれるドアに、わたしは後ずさりした。

部屋の奥から覗くようにこちらを見ているエリザの蒼ざめた顔。

そして、わたしのすぐそばには、神経質な印象の細面の顔の男が立っていた。

………この人が、ジル・ド・レイ―――――!!



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