〜深愛〜届かぬ手紙〜
私は家で父と母に
ささやかな誕生会をしてもらい、その後で小西と会う約束をしていた…。





『彼氏も呼べば
よかったのに…』


父はまだ、
小西に会った事がなく
残念そうに言う…



『いぃのっ
後で会う約束してるから』


『違うわよ〜
リナじゃなくて、
お父さんが会いたがってるのっ』


母が笑いながら席に着く…


『…ねぇ、リナ…、
前から聞こうと思ってたんだけど…。』


『ん…なぁに、お母さん』


母は少しためらった様子だった…


『…小西さんて、
下の名前…なんていうのかな…って』



『えっ何、そんな事』



何を聞かれるのかと思い、一瞬構えた力がふっと抜けてしまった…



『…だってぇ、小西、小西って、中学生じゃないんだからぁ…』



『いまさら、
恥ずかしくて名前でなんか呼べないよぉ』


少し照れる…



『…で、なんていうの
小西さんの名前…』



『…タケルだよ
小西タケル…』



母が一瞬
言葉につまる…


『…そぅ…。
…タケル君ていうの…』



母の様子に
私と父は不思議そうに
顔を見合わせた…



『どうした?』


父の声に母は
ビクッとして答えた


『えっ
あっいい名前だなぁ〜って…ほらぁ、タケルって男らしくて〜イィじやなぁい』



『そっ、そ〜お』


母は何かをごまかす様にも見えたが、
私はそこまで気にも止めなかった…
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