運命の路線
退院から三日間自宅療養を満喫した俺だったが、今日からついに登校再開となる。正直な話、面倒でたまらない……罰当たりな事を言う様だが、軽傷というのも厄介なものだ。どうせなら、骨の一本か二本折れておけばいくらでも仮病がきくというのに。
おかげで、母親は三日間元気な俺を見て安心したのか事故以前の口うるささを取り戻していた。
「俊彦っ! あんたいい加減起きてきなさいよ」
おそらく一階のリビングからであろうにも関わらず、二階のこの部屋まではっきり届くボリューム。母の声量には何か賞状をあげたくなるくらいだ。
「あんた聞こえてんの。聞こえてるなら返事ぐらいしなさい!」
そんな大声イヤホン付けてても聞こえますよーっと。
「今行くっての!」
部屋の扉を開け、寝起きながらもなるべく大きな声で返事をする。
「えっ?! 何て言ったんだい」
……声は大きいが、耳が遠いとは厄介というよりはうざい領域だね。
「いつもながら嫌になるよ……」
返事を諦め、さっさと準備を終えて下に行く事にするとしよう。