運命の路線
朝の不運会話を終えて家を出た俺はニューバイクにまたがり、曲がり角、交差点、信号を小学生の登校班の三割増しぐらい注意深く進んで我が学び屋、府立平永高校へとたどり着いた。
ここは、学力の方も高くも低くも無く、かといって目立って有名な部活も無く、綺麗でも汚くも無い校舎。平凡中の平凡を取り揃えている。むしろ、平凡過ぎて逆に稀少な存在である。
「うむ。相変わらず何の変化も無いな」
「そりゃあ、たかだか二週間程度じゃ無いでしょ」
「……唐突に人の独り言に返事するのはやめないか?」
「唐突に独り言を言う方が悪いのよ」
この高校生にもなろうと言うのにポニーテールを決め込む女生徒(?)は我が不肖の幼なじみ桑島五月(くわしま さつき)。性格は良く言って天真爛漫でポジティブ、悪く言って恥知らずのお気楽者だ。
「朝から失礼ね」
「おっと本音が漏れた」
「朝から眠りたいの? もう二度と起きないコースと永遠に起きないコースがあるけど」
「……どっちも同じコースに聞こえるのは気のせい?」
「気のせい」
悪魔の微笑みが俺に向けられる。そこから俺は教室まで悪魔と徒競走させられたのだった。正直、トラックより悪魔は怖かった。