雪が降った。そして君が。
雪が降った。そして君が。
もっと……もっと。
僕は空を見上げた。空からは音も立てず、ゆっくりとふかふかした柔らかな白いものが規則的に落ちてくる。反射神経から来るものなのだろうか、思わず瞑りそうになる目を必死に耐える。
すると睫毛にそれがふわっと乗っかり、僕の視界の半分が白いものに覆われた。
その冷たさにとうとう耐えきれなくなり、僕はパチパチと数回瞬きを繰り返した。目の中の温度とそれの温度が混じり合う。
二つの温度差が徐々に消えていくように、ゆっくりと溶け合っていく。
目だけではない。僕の手に、僕の頬に、僕の鼻に、僕の唇に、その真っ白いものがどんどんと染み渡っていく。
決して消えて無くなるわけじゃない。僕の中に入り込んでいくんだ。そっと気付かないうちに。そして今までなかったヒヤッとした感覚が体を刺激する。なぜかそれを妙に心地よく感じている僕がいる。
雪はきっと君に似ている。
僕は辺りを見渡した。葉っぱの取れた寒そうな木の枝に、うっすらと帽子を被ったように真っ白な雪が乗っかっている。東京で今年初めての雪だ。
もっと。もっとだ。僕は願うようにもう一度、空を見上げる。そんな願いも虚しく、先程よりも空は明るくなり始め、顔に当たる回数も断続的になってきた。
――ちくしょう。ついてない。無意識に舌打ちをしてしまう。
僕は慌ててしゃがみ込み足元に出来ている白い膜を必死に掻き集める。手袋なんかしていないのでどんどん指先が赤くなり始め、ついには感覚さえも失われていく。それでも僕は懸命にそれを手の中でギュッと丸めた。
想いを込めて。