雪が降った。そして君が。
 きっと美帆のやつ、今頃びっくりしているに違いない。あまりに唐突に僕がいなくなって。いや、僕が一番驚いている。だって考えるより前に勝手に体が動いてしまっていたのだから。
 見られたくなかったんだ、泣き顔なんて。今度こそカッコつけたわけじゃない。


 だって、美帆が泣かないのに僕が泣くわけにはいかないだろう――。

 鼻水が垂れてきそうになり僕は慌ててズッと鼻を啜った。美帆は泣くといつも鼻水かんでいたよな。チーンなんてマンガみたいに派手な音立てて。

 ……ああ、そうか。

 僕は今、嬉しいんだ。
 美帆が泣いている時によく言ってたっけ。「だって嬉しいんだもん」って。きっと今の僕は嬉しすぎるから涙が止まってくれないんだ。
「そっか……ははっ」
 また美帆に教えられちゃったな。本当すごいよお前は。じゃあ、泣いてもいいんだよな? 堪える必要なんてないよな? 思いきり泣いちゃってもいいんだよな?

 嬉しいんだから。






< 7 / 10 >

この作品をシェア

pagetop