雪が降った。そして君が。
 そう自分を納得させた途端、洪水のようにとめどなく僕の目から涙が溢れ出した。

「くっ……美帆、よかっ……よかった、よかっ……くっ、ありが……とう」
 もう人目なんか気にならなかった。僕は鼻水を垂らしながら声を上げて泣いた。わんわんと子供のように。



 おそらく一時間近く、そうしていたように思う。

「……戻らなくちゃ」
 少しばかり気持ちの落ち着いた僕は、大きく深呼吸して立ち上がった。冬の冷たい空気が熱くなった僕の体の奥にスッと入っていき、徐々に頭が冴えてくる。
 行かなくちゃ。きっと美帆が心配している。もしかしたら不安になって、泣いているかもしれない。

 そう、守りたいだなんて大層なことは言えない。

 ただ僕は、君が涙を流すのなら拭ってあげる。
 君の手がかじかんでいるのなら、握り締めてあげる。
 君が嬉しいのなら、一緒に手を叩きあってあげる。
 君が悔しい思いをしたなら、それが消えるまで何時間でも愚痴を聞いてあげる。なんならストレートパンチだって受けて立とう。
 君が寂しさに耐えられなくならないように不安に苛まれないように――ここにいよう。


 カッコわるい僕は、そんなことしか出来ない。それでも。こんな情けないやつでも。君が好きなんだ。
 どんなやつにだって、どんなときにだって、大声を張り上げて言えるよ。


 君を愛してる、と。
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