無口な王子様
その日の放課後、私と亜由美は二人でソワレに向かった。

途中で、亜由美のクリスマス用の服を買いにショッピングセンターに寄り道をする。

駅前に出来た新しい施設で、たくさんのお店が入っている。

その中に、亜由美が憧れている販売員さんが働いているのと同じショップがあった。
もちろん、その販売員さんはこんな片田舎のお店ではなくて、東京のお店にいるのだけど。

「ワンピにしよっかなぁー。」

亜由美はあれこれ手に取っては鏡の前に行く。

一方で私は、大音量の音楽とお店のお姉さんのハイテンションな接客にぐったりとしていた。

出来るだけ、スピーカーから遠い場所で、極端に生地の分量が少ない服をぼんやり見ていたら、

「お友達も着てみたらぁ?」

と、お姉さんに亜由美と色違いの服を渡されてしまう。



地味な髪型に校則通りに制服を着た私と、蝶のような髪型をして背中の開いたニットと全部見えちゃいそうなミニスカートのお姉さん。

これは、亜由美と優奈以上に奇妙に見えるかも。

というか、これ、私には絶対似合わないでしょ。


私が、そのワンピースを怪訝な目で見ていると、

「見て!!見て!!」

亜由美が、試着室から出てきた。

「亜由美ちゃんめっちゃかわいい!!いいじゃん!」

お姉さんが亜由美の事を、まるで友達かのような口調で褒めている。

私は、その隙に渡された服をそっと近くのラックに戻した。

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